福岡県西沖地震特報3
近況報告 福岡県西沖地震が発生してから丁度一ヵ月後大きな余震がありましたが本震から二ヶ月以上過ぎました。
発生当初は「警固断層」とは別の断層の活動と専門家の発表が行われていましたが、最近になって、専門家もやっと本格的な調査に着手し、最近は今回の震源の断層と警固断層とが地下深くでつながりになっている一連の断層帯と言うのが論理的だとの説が支配的になってきているようです。
本格的調査といっても博多湾内の調査は6月以降、陸地部は夏以降と悠長な構えです。 最近は余震の回数も減り(機械的観測ではM≧1が毎日20回平均あっているようですが、人感振動はほとんどありません)終息に向かっているようにも見えますが、陸地部の断層(約22km)が活動しなければ良いのだがと一抹の不安は残ります。
復旧工事も事務所ビルや戸建て住宅は各所で行われており、マンション関係も管理組合の総会等で着手決議が行われ着工しているものもあり、復旧工事に関連した工事業者は大忙しのようです。
私が知っている範囲でも、工事価格の取り決めに業者がかなり強気で、時期的な事と工事規模から業者の提示価格に納得せざるを得ないことがあります。
当時ほどはないにしても、オイルショックの頃やアジア太平洋博関連工事の頃の業者との駆け引きや関係が思い出されました。
又、今回の地震では役所の縦割り行政の弊害による住民の不便さに伴う苦情、地震保険と保障(補償・・こちらが正解?)内容の矛盾、マンション販売業者?・施工業者の倒産による住民の不利益(業者の中には別会社として営業中のものが多い)が顕著に見受けられました。
法的な矛盾点を理解し善良な住民の為に法整備を考えてくれる政治家や公務員が出てくれることを願いつつ・・・・・ 今回の特集までは地震被害を受けた記録写真を主体に掲載しようと思います。
前原市川付地区 山間部で比較的被害が少なかった地域【編者の住居近辺】
No.01 編者自宅渡り廊下屋根軒先
東西方向に配置された廊下の北側屋根の軒先が少しズレを起こした。私の記憶では50年以上放置されていた為、少し不ぞろいにはなっていたが、地震の影響でズレが生じた。北側の屋根面は瓦5枚葺きほどの狭い幅の屋根になっている。葺き幅の大きな南面及び棟瓦には異常は見つからなかった。
南面には太陽熱温水器(1.8m×1.8m)が2基(約1.5t)載っているが、目視で異常は認められなかった。
No.02 民家の塀にクラック-1
俗に言う万年塀の柱部分が影響を受けクラックが入っていた。築70~80年以上経年したもので、クラック幅は2~3mm程度ありどの様な修復をされるのか見守って行く予定だ。
No.03 民家の塀にクラック-2
同じ塀の柱と笠木部分に剥落が生じていた。目視から想定した個人的見解ではこの部分は撤去してやり変えた方が安全と思う。
No.04 民家敷地内崖の崩壊
道路から2mほど下にある敷地内に一部崩落している。この部分には境界沿いに樹齢50年ほどの杉が植えられておりこの根の影響も受けたものと思う。市道との兼ね合いもあり地主には伐採と市当局との調整も薦めておいた。道路を隔て西側に編者持ち山があり、山に異常は見当たらなかったけど、降雨時期が少し気がかりだ。
崩落した土砂の上に散っていた椿の花びらに無常を感じました。
No.05 祠(ほこら)の倒壊
崖崩壊のあった部分から20~30mほど西に奥まった編者所有の山中にある小さな祠が倒壊していた。 軟岩を細工し明治以前に造られたものと思われ、現在は何も祀ってないが放置は出来ないだろうし、暇なときに集積だけでもしておこう。
No.06 石碑に亀裂
編者宅南側隣地にある公民館敷地内の石碑(自然石加工)根元に亀裂が入っていた。 東側を向いた碑の右下に0.1mmほどの亀裂(石理とも思われる)があり一部剥離していたのが気掛り。
No.07 石碑の亀裂部拡大
石碑亀裂部の剥離した箇所の詳細です。(コケの生えた左側亀裂沿いのアイボリー色に見える箇所)南北方向に揺れたときに亀裂部に大きな力が加わり剥離したものと想定しています。
破片は台座付近には見当たらなかったのでかなり遠くまで飛んだものと思われる。
前原市以外の被災状況混載 糸島郡志摩町
No.08 民家(木造平屋)の壁クラック
志摩町の民家(木造平屋)壁入り隅部分にクラックが生じています。 記憶では別棟との取り合い的な感じの箇所であり、個人的感覚では真壁方式であれば当然柱の角が露出すべき部分であるが、どう言う訳かこの部分は大壁方式との併用になっていた。幸い壁面にはクラックは見当たらないのでコーナー部の補修だけですみそうだ。
No.09 同じ民家の玄関
玄関外部袖壁幅木部と扉開口部(左斜め上)にクラックが生じています。
福岡市内
No.10 曲がった福岡市内の放送タワーアンテナ
福岡市内にある某テレビ局の放送用アンテナです。 数々の台風等には耐えてきたアンテナも地震には耐えることが出来なかったようで先端の細い部分が少し北側に曲がっています。でも、人通りの多い天神方向からは変形が見えないので気がついている人は案外少ないようです。
No.11 マリナタウンから福岡ドーム方向展望
福岡市西部地区の住宅地区で海岸に面し中高層マンションも多い地区です。 20階建てマンションの屋上からの展望で東側には福岡タワー(上部の細長い建物)やシーホークホテル(タワー左側大きな白っぽい建物)、その左側に福岡ドーム(現在はソフトバンクドーム)も見えます。左側の砂浜は人工海浜になっており地震直後は液状化現象が顕著でしたが、被災数日後にはきれいに均されていました。危険防止という話を聞きましたが、近辺の地価下落防止が本音と思います。画面中央部を右側を横切っている川は室見川です。右側にクレーンのアームは現在地元ディベロッパーのマンション建設工事用のものです。地震後購入予約も液状化の話が出てキャンセルが相次いでいるともっぱらの噂です。
尚、このマンションは福岡市から委嘱された「被災建築物応急危険度判定士」により「安全」と言う判定票を受理されています。管理組合としては不安が残るので私共に安全性を判断してほしいとの相談があり調査しました。
この地域のマンション管理組合から安全性の相談があり現地調査に行った折の写真を掲載します。
No.12 マンション(メールボックス設置入り口)柱縦方向クラック(亀裂)
一階部分の柱に縦方向のクラックがはいっています。 幸いこの部分はデザイン的に一階の柱を大きく見せた部分と構造的な柱の境目と判断できたので、 構造的なダメージではなく『大丈夫』と判定しました。
「判定士」の説明不足から住民の不安がぬぐえなかった箇所の一つの様でした。
【短時間に「判定用マニュアル」に基づき多くの対象建物の安全性を判定する必要があり、住民に納得させる為のコミュニケーション不足が不安と不信感を抱かせたものだと思いました。】
No.13 マンション玄関前の地盤沈下
地盤液状化の影響で沈下したものと想定します。 玄関部と歩道部に20センチから30センチほどの落差が出来ていました。この地域は海浜の埋め立てによる造成地と聞いているが、敷地周辺および敷地内の露出土壌から想定すると細粒の砂質土壌で埋められたものと思う。
【昭和39年(1964年)新潟地震以降粒状均質な砂質土壌は液状化しやすいと言う話を聞いた記憶がよみがえりました。海面と敷地地盤には数メートルの高低差があるが、常水位以下部分で液状化が始まり敷地地盤も同時に液状化した部分とそれによる沈下が生じたと素人判断するのは・・・・・・・・】
No.14 駐車場路面亀裂
同じマンションの西側に設けられた駐車場です。 この駐車場の西に遊歩道(幅2mくらい)があり、その西隣は公園(1.5m位低い)があり、いたるところに液状化の痕跡がみうけられた。亀裂は海岸とほぼ直角方向(ほぼ南北方向)に数本発生していた。
亀裂巾は大きいところで10センチほどあり長さも10m以上のものが見受けられた。 深さは計測しなかったけど数十センチ以上と思われる。
No.15 遊歩道の被災
駐車場の西側に設けられた遊歩道が液状化の影響で通行不能になっていた。 公園と隣接し、1.5mほど高い位置にあり境界部はフェンスの基礎を兼ねたコンクリート擁壁になって
いるが、基礎部分の公園側に液状化の痕跡が随所に見受けられた。痕跡の大きなものは直径1メートル高さ30センチほどの円錐形の砂山が出来ていた。
No.16 遊歩道の落差
遊歩道の始点になる部分が一番大きな変形が見受けられた。 すぐ横は構造的に配慮された工作物になっており目立ったと思うが、この部分は擁壁自体が引き下げられた状態になっており、30センチほどの高低差が生じていた。段差、亀裂巾等を舗石ブロックの大きさ(30センチ角厚6センチ)を尺度に想像してください。
中央区内の被災状況
No.17 危険度調査結果表
市委嘱の「被災建築物応急危険度判定士」によって判定を受けた建物には『安全(緑色)』『要注意(黄色)』『危険(赤色)』の表示張り出されています。
この建物の場合、外装のタイルが一部剥落しているため『要注意』の表示になっています。 建物によっては利用者に不安を与え営業活動にマイナスイメージになるからと言う建物の持ち主の都合で判定表示が張り出されていないものが多いようです。
No.18 壁の亀裂
編者が勤務している8階建事務所ビル1階駐車場の壁に入った亀裂です。 この壁は梁間方向(南北方向)に配置されており、クロス型にクラックが生じています。構造的には大きな問題はないと思いますが、建物全体の壁の配置バランスを考えた場合あまり理想的な配置にはなっていないように感じます。亀裂巾の大きな部分は0.3mm以上あり厚さ18センチの壁を貫通した亀裂になっています。コンクリートの中性化防止のためには早急に処理が必要と思います。
No.19 鋼製建具枠
編者勤務の事務所(鉄筋コンクリート造8階建ての3階)入り口扉枠の塗装が剥げかけています。 昨年塗装替えが行われていたので、付着力等にも問題があると思いますが、地震後塗装の剥離が生じたので壁の変位による影響を枠自体も受けたために生じた現象と思われます。
位置的には建具の上部枠全長と縦枠上から四分の一の壁仕上げ面との取り合い部分に発生している。扉の開閉も地震前に比べ少し抵抗が大きくなったように感じます。
No.20 道路沈下
編者勤務事務所横の道路部で左側の隣接ビルの犬走り部は構造的にもしっかりしていると思われるが、道路工作物(側溝)と1センチほどの巾が生じ、3センチほどの高低差が生じている。
右側駐車場のアスファルトはフェンス部分で盛り上がりや沈下等の影響が見受けられる。 この地区は那珂川河口から70~80m離れた位置で表層部の地盤はあまり好ましくない地域です。
No.21 地盤沈下で折損した雨樋
天神地区にあるビジネスホテルの雨どいです。 地盤沈下により塩ビパイプ製の樋が折損し2センチほど開いています。
編者の個人的感覚では施工担当者の認識不足からこの様な結果が生じたものと思います。 この部分は固定ではなくルーズにしておくと地盤沈下による折損は防げたと思いますが、2センチ以上の沈下のためルーズにしておいても上下のパイプは口をあけていたと思いますが・・・・・・
No.22 補修中の壁面
正面の壁は壁画が描かれた様に見えますが現在補修中のホテルフロントの壁面です。 壁に入ったクラックを補修するために既存の仕上げ面を撤去しクラック沿いに樹脂の注入作業を行っているところです。
※その他の被災状況
No.23 灯篭の転倒
大濠公園の北側にある唐人町商店街のはずれに位置する鉄筋コンクリート造2階建て建物の2階部分に作られた庭の灯篭です。 建物本体には大きな損傷は受けていませんでしたが、南西方向に灯篭の上部が転落していました。
灯篭全体の高さは1m内外なのでかなりの揺れを受けたものと思います。近くには寺院や墓地もありますが、通りすがりに見た範囲では、墓石の転倒は見受けられませんでしたが、レンガ(セメント系)積みの塀は部分的に倒壊をしたり亀裂が入ったものが多く見られました。以前この付近で工事を行ったとき砂質土壌だった記憶があります。また、五重塔を模して造られた某寺院の鉄筋コンクリートの納骨堂の宝珠部分が脱落しバランス的に落ち着かない感じになっていました。
(九輪の上部には宝珠があると言う編者の固定観念かもしれませんが・・・・・・・)
No.24 修復を待つマンション
福岡市内で大きな被害を受けた中央区今泉地区のマンションです。 幸いこのマンションは外から見た感じでは外壁の修復程度ですみそうですが、ここから100mくらいの場所のマンション数棟は傷みが激しく解体工事が行われ更地になりつつあります。
「新耐震基準」で建てられたもので、終の棲家として購入したマンションが被災し危険な為住む事も出来ず訴訟問題に発展する事例も出てきたようです。耐震基準の考え方に法作成者・設計関係者・ディベロッパーと住民の感覚の違いが顕在化してきたようです。
(壁面に紙を張ったような部分及び窓周りの黄色の部分は被災してタイルが落下いないように応急処置がしてありました。)
No.25 鳥居の被災(既報)
編者の氏神の大鳥居も地震の揺れにより被災を受けています。 南北方向に柱が設置されており貫き材を受けている柱の部分に剥離が見えます。 剥離して落下の心配がありますので柱の近くには寄り付かないようにしています。
この鳥居の本殿側にある鳥居は参拝者が投げ上げた石が4月20日の余震のとき数個転落していました。又、この氏神本殿の西側に仲哀天皇を仮埋葬した場所と言われ地域の人が「奥の院」と呼んでいる古墳に石積みの祠があり神域がありますが祠は倒壊しています。結構大きな石造りなので今後復旧が経費的にも大仕事になりそうです。新規に築造したほうが経費的に安価であればその方が良いとの話もありますが、編者としては既存の石材を主体に復旧すべきだと言う説でいます。
(この古墳は神域と言うこともあり過去に調査された記録がない部分なので修復の機会に発掘調査と言う考えもありますが、以前文化財課に話した折予算的余裕がないと言っていたので無理でしょう。)